こんにちは、淡海です。
久しぶりに山へ野宿に行ってまいりました。
奥多摩にある大岳山です。
荷物の準備をすませ、家を出ててから駅まで歩くこと5分。
ヘッドランプの電池を忘れたことに気づき、また家に戻る。
電池をザックに入れ、家を出ててから駅まで歩くこと5分。
またもやハッと気づく。
今回、テントの中で読むための本に、
『世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ』(下山祐治)と、
『賢者の非常食』(小泉武夫)を選んだのですが、
『賢者の非常食』の内容が良くて、自分の手持ちの食料があまりに"常食"だったらどうしよう、
という不安が頭の中でグルグル回り、これはイカンとまた家に引き返し、
『ダンゴムシに心はあるのか』(森山徹)に差し替えました。
結果、間違いのない選択でした。
こいつアホか、と思われるかも知れませんが、わたしの山野宿の目的の半分は、
完全無音状態で本を読むためです。
ですから、食料や水と同様、本は重要であります。

10:02
奥多摩駅着。
気温が2℃と、やはり肌寒かったので温かい缶コーヒーを飲んで出発。
登山口まで歩きます。
飲み水は持ってこなかったのですが、その辺で飲めそうです。
暗いトンネルをくぐり抜け、さらに歩くこと1時間半。

12:19
登山口にある東屋に到着。
少し小腹が空いたので、行動食を取り出す。
今年もお世話になります。
タータンチェックの貴公子、WalkersのSHORT BREAD。
気が遠くなるほどのパサパサ感、鼻腔を突き破るバター臭、
そして母の乳房にも似た柔らかい甘み......。
嗚呼......ジョセフィーヌ。香しき女よ。
枯れた風景で旅愁を誘います。
多少、凍ってるところもありますが、アイゼンは必要ありませんでした。

13:11
三ツ釜の滝に到着。
文字通り、三段クッションになっている滝で、たいそうなものでした。
さらに進む。
あまり人気のないコースなのか、他に登山者はいません。
ちょっとした岩登りなんかも出てきて楽しいアクションです。

14:06
大滝に到着。
滝壺の表面も凍っていました。
氷を見ていると、なんとも美味そうな水だなあ、と思えてきたので3リットル汲みました。
水も豊富だし、早めにこの辺でテントを張ってもいいかな、と思ったのですが、
標識を見ると、
と、書かれていたので進むことにしました。
ここで泊まったとしても、朝一で悪路スタートはきついです。
たしかに、歩きにくい岩場で倒木が多く、悪路です。
でも、汗をかくこともなく、かといって震える寒さを感じるわけでもなく、意外と快適に登れます。
しばらく進むと岩場から染み出る聖水が!
このバツグンな苔の張り付き、岩面からしたたる雫。
これは、まったく美味そうな水です。
氷柱をペロっと舐めてみる。
キィィィィィィィィィンンンンン......
〜寛政6(1794)年〜
(殿の〜おな〜り〜〜〜)
『その者。面を上げい』
「はっ!」
『本日の剣術試合、天晴れであった。名を申せ』
「はっ! 辻馬ノ助、天然宗心流免許皆伝にございます」
『なるほど。上段受けから胴への裁き、見事であった』
「有り難きお言葉を頂戴いたします」
『褒美を取らせよう。もう少し近こう寄れ』
「い、いや、、しかし」
『本日は無礼講じゃ』
「はっ!」
(ススス...)
『もうちょっと寄れ!』
「は、はっ!」
(スススス......)
『ほう。この上腕筋は見事な曲線美じゃ。胸筋の厚みはどうじゃ』
「あ、いや、、しかし、殿」
『んん? 胸のところに米粒が付いておるぞ』
「あ、これはお恥ずかしい。すぐに取り払います」
『待て! 触るな!』
「は!?」
殿の舌先が胸元の米粒へ、ゆっくりと近づいていく......。
「ちょ、、と、殿!」
『苦しゅうない! 苦しゅうないぞ!』
テロテロテロピ......。
『はっ、はふふぁ、、と、、、ととと殿ぉぉぉぉぉ!』
「実に甘美じゃ(ペロリ)」
キィィィィィィィィィンンンンン......
ぐらいに甘い水でした。
さきほどの滝の水を捨て、新たに汲みなおしました。
なぜなら、今日の夕食には美味い水が必要不可欠だからです。
岩場を抜けると、雪がちらほら出てきました。
気温は0℃。
風はないので、さほど寒くありません。
キャップの忘れ物が。
道沿いの切り株に引っ掛けておきました。
どなたか落としてますよー!
頂上までもうすぐです。

16:36
大岳山に山頂に到着。
ちょっと曇ってますけど、いい富士山です。
丹沢方面。
しかも、最高のテントスペースがある。
今日の宿は山頂にこしらえます。
Mountain Hard WearのSkyledge2.1。
もう5年ほどの付き合いになりましょうか、何泊も共にした同志です。
このカラーリングをみると、
ヤアッ!
いつもストロンガーを思い出します。

17:18
天幕を張ったり、なんだかんだしてるとすっかり日も落ちました。
夕飯の支度をします。
本日は、かねてからご紹介しておりましたガソリンストーブの点火式です。
いまの調理器具は、中高年を中心にガス燃料、ウルトラライト君たちの間では、
アルコールや固形燃料が主流です。
ガソリン燃料は、"重い、うるさい、めんどくさい、危険"と、端へ追いやられている現状です。
わたしは!
そういう道具にこそ光を浴びせたいのであります!
ガスなんかは、スイッチポンで火がつきますが、ガソリンはそうはいきません。
まず、プレヒートという儀式が必要です。
プレヒートとは、タンクの中にある液体ガソリンを温め、気化させる作業です。
タンクのくぼみにアルコールを垂らします。
スポイトがあれば、直接ガソリンを垂らしてもいいです。
点火。
火が鎮火するまでしばらく待ちます。
この間に、タンク内のガソリンの温度が上がり、液体が気化します。
おもしろいのが、温め過ぎると怒って火柱を上げ、
プレヒートが足りないとプスプスとひねくれます。
感情を持った生きている道具です。
タンクが十分に温まったら、バルブを少しだけ開いて噴出口に再び点火。
バッスーン、ドルルルルル。。。
と、単車のエンジンのような轟音を響かせます。
火力もストロンガーです。
こんなにも力強く、男らしい燃料を使って何を食べたかったかと申しますと、
湯どうふであります。
ガソリンという男根のようなバンカラ燃料で、湯どうふという、
おおよそエネルギーにもならない軟弱なものを食べてみたかったのです。
今回、わたしはこの"とうふを運ぶ"ということに頭を振り絞りました。
エベレスト登山隊が、地形や気象、隊員の体調などを細かくリサーチするように、
どのとうふが頑丈で、衝撃に絶えることができ、なおかつ美味いのか?
スーパーで調べ尽くしました。
まず、木綿と絹ごしの選定ですが、のどごしを考えると、絹ごしに軍配が上がります。
しかし、絹ごしは木綿と比べると、繊細で柔らかくて崩れやすいという欠点がございます。
すき焼きは木綿がいいけど、湯どうふは絹ごしが食べたい。
それでいきついたのが、西友ブランドの国産大豆絹とうふだったのです。
重要なポイントは容器と、とうふ本体の隙間です。
水に浸されてプカプカ漂っているとうふをよく目にしますが、
あれだとザックの中でとうふ本体が容器にアタックしてしまい、砕けてしまいます。
ですから、とうふ本体と容器が密着している、プリンのような密閉感のとうふがベストなのであります。
バルルルル!
バルルルル!
と、うなり声をあげてます。
沸騰するにつれ、プルプルと小刻みにとうふが震えます。
轟音とともに燃え盛る男。
その熱に身を委ねる白い肌。
これはまさに愛の営みです!
なんとも素晴らしい!
さらに、友達のお父さんにもらった柚子胡椒をコンタクトレンズの容器に入れて持ってきました。
耳かき一杯の量でおどろく辛さのデス・ペーストです。
ポン酢に浸して食べる。
気温はすでに0℃を切ろうとしていましたが、この寒空の中で食う熱々の湯どうふは、
極楽の極地であり、このまま天へ昇って飛び散ってもいい、とさえ思いました。
味覚が絶えきれず、頭がクラクラし、視界が歪みます。
とはいえ、これだけだと腹は満たされないので、
鍋を開始!
ピーンと張りつめた無音の世界、湯気とともにハフッ!ハフッ!という息漏れだけが響きます。
山では食欲が止まらない!
うどんも入れます。
食べる!食べる!食べる!

7:08
寝るっ!
(つづく)